コラム2026.09.30
ブランド戦略を経営会議でどう使うか——報告で終わらせない意思決定の進め方
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
結論
ブランド戦略を経営会議で使うには、認知度や制作物の進捗報告だけで終わらせず、誰に何を約束するか、その約束に必要な投資・業務変更は何かを議題にします。各議題について選択肢、判断根拠、決定者、次の確認時点を残します。
これは会議設計の実務提案であり、特定の議題数や会議頻度が成果を保証するという意味ではありません。効果測定の記事が指標の設計を扱うのに対し、本稿は指標を使った意思決定の仕方を扱います。
評価と経営判断をつなぐ
ISOの公開概要によると、ISO 20671-1:2021は、ブランド評価のためのインプット、アウトプットの側面、指標例を含む枠組みを定め、社内外のブランド評価に利用できる規格です。[1] ただし、ここで確認できるのは公開概要です。規格本文に会議運営の具体的な手順が書かれていると主張するものではありません。
HUVの以下の方法は、測定結果を実際の経営判断に接続するための提案です。ブランドを広告部門だけの課題として扱うと、顧客への約束を実行する人員・設備・権限の判断が会議から抜けてしまいます。
議題を四つの問いに整理する
1. 誰を対象にするか
今期、優先する顧客・用途は何か。売上規模だけでなく、採算、提供能力、継続性、戦略との適合を確認します。対象外にする依頼も決めます。営業現場だけで例外対応を抱え込まないためです。
2. 何を約束し、何を約束しないか
顧客が評価する価値と、社内で再現できる提供内容を照らし合わせます。言葉だけ先行していないか、品質、納期、サポートの条件を確認します。ブランドプロミスの記事も判断の土台になります。
3. 何に資源を配分するか
人員、教育、設備、制作、営業活動のどれに投資するかを決めます。期待する変化と費用、実行責任者を記録します。複数の施策を一度に増やす場合は、何を中止・縮小するかも確認します。
4. 何が変わったら判断を見直すか
顧客の選定理由、対象案件の粗利、社員が約束を実行できたかなどを確認します。数字が変わっても、その理由をブランド施策だけに決めつけません。市場環境、価格改定、営業体制の変更も同じ記録に残します。
会議前・会議中・会議後の手順
会議前: 一議題につき「決めたいこと、選択肢、確認済みの情報、未確認事項、費用・制約」を一枚にまとめます。資料の量より、判断に足りない情報が分かることを優先します。
会議中: 意見と事実を区別します。「顧客が求めている」という発言には、どの顧客の、いつの情報かを確認します。情報が不足していれば、無理に結論を出さず、調べる担当と期限を決めます。
会議後: 決定内容、理由、実行担当、確認日を残し、営業、採用、制作など関係部門に伝えます。次回は前回の決定が実行されたかを確認してから、新しい施策を追加します。
どのような状態なら見直すか
顧客への約束と実際の提供にずれがあるなら、広告表現の修正だけでなく、提供体制か約束そのものを見直します。対象外の案件が増えるなら、顧客の定義が狭すぎるのか、現場で基準が使われていないのかを調べます。会議が毎回同じ数値の報告に終わるなら、「次に何を決める必要があるか」から議題を作り直します。
限界
ブランド評価の指標や会議記録だけで、売上変化の原因を特定できるわけではありません。また、税務、法務、人事制度など専門判断が必要な事項は、該当する専門家と検討してください。会議は意思決定の場ですが、現場で試して修正する工程を代替しません。
まとめ
次回の会議では、ブランド関連の報告から一つだけ「決めるべき問い」を選んでください。対象顧客、約束、資源配分、見直し条件のどこに関わるかを明確にし、決定理由と次の確認日まで残します。
参考資料
[1] International Organization for Standardization (ISO), ISO 20671-1:2021 Brand evaluation — Part 1: Principles and fundamentals(公開概要。規格の全文は参照していない)。閲覧日:2026年9月30日。
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