コラム2026.09.27

BtoBブランディングの進め方——問題の本質を見誤ると大変なことになる

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績


この記事で分かること

  • BtoBブランディングの正しい8つのステップ
  • なぜ「問題の設定」が最も重要なのか
  • よくある失敗パターンとその原因
  • 現場でのブランディング診断の方法

結論(要約)

BtoBブランディングは、①ブランドコンセプトの設定②環境分析③市場定義④顧客定義⑤独自性の定義⑥ブランドアイデンティティの設計⑦ブランド戦略の設計⑧活動層への実装、という8つのステップで進めます。最も重要なのは最初の「問題の設定」です。表面的な症状の裏にある本質的な原因を掴めなければ、後の全ての設計がズレます。


BtoBブランディングの相談を受けるとき、こういう依頼が多いです。

「本業の利益率が下がってきた。新しい事業や商品を作ってブランド化したい。」

気持ちは分かります。しかしこのまま進むと、問題の本質を見誤ることになります。本業の問題を解決しないまま新事業に投資すると、本業の利益率がさらに下がり、新事業も軌道に乗らないという最悪の結果になりかねません。


BtoBブランディングの8つのステップとは

①ブランドコンセプトの設定(問題の特定と目的の定義) ②環境分析(3C・バリューチェーン・財務・PEST・5Forces) ③市場定義(どの市場で戦うか) ④顧客定義(クラスター設計・ペルソナ設計) ⑤独自性の定義(競合との差別化の軸) ⑥ブランドアイデンティティの設計(自社は何者か) ⑦ブランド戦略の設計(どう実現するか) ⑧活動層への実装(営業・採用・Web・社内浸透)

この8つのステップの中で最も重要なのが、最初の「問題の設定」です。


なぜ「問題の設定」が最も重要なのか

表面的な症状の裏にある本質的な原因を掴めなければ、後の全ての設計がズレます。

よくある相談パターンがあります。「本業の利益率が下がっている。新しい事業や商品を作ってブランド化したい。」

しかし本業の利益率が下がっている原因は様々です。

  • 価格競争に巻き込まれている
  • 商流のどこかで利益が漏れている
  • バリューチェーンに非効率がある
  • 市場自体が縮小している
  • 競合環境が変化した

この原因を正しく特定せずに「新しいものを作ってブランド化する」という対策を打つと、本業の問題は解決されないまま、新事業への投資だけが積み上がります。

弊社が最初に行うのは、現在の商流・バリューチェーン・案件ごとの収益性の診断です。「どこで利益が生まれ、どこで漏れているか」を正しく捉えることで、初めて本質的な問題が見えてきます。


ステップ①:ブランドコンセプトの設定とは

ブランドコンセプトとは、ブランディングに取り組む目的と、解決すべき問題をまとめたものです。

ここで定義するのは3つです。

なぜブランディングに取り組むのか(目的) 売上向上・採用改善・価格競争脱却・事業承継など、目的を明確にします。

何がボトルネックになっているのか(問題) 商流・収益性・競合環境・組織の問題など、本質的な原因を特定します。

何を解決するのか(課題) 特定した問題に対して、ブランディングで何を変えるのかをまとめます。


ステップ②:環境分析では何を見るのか

問題が特定できたら、多角的な環境分析を行います。

3C分析:顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つの視点で現状を整理します。

バリューチェーン分析:自社の事業活動のどこで価値が生まれ、どこでコストが発生しているかを整理します。利益が漏れている箇所を特定するために有効です。

財務分析:案件ごとの収益性・粗利率・固定費の構造を把握します。「売上はあるのに利益が残らない」という会社の多くは、ここに問題があります。

PEST分析:政治・経済・社会・技術という4つの視点で外部環境の変化を把握します。

5Forces分析:競合・新規参入・代替品・買い手・売り手の5つの力で業界構造を分析します。


ステップ③〜⑤:市場・顧客・独自性の定義

ステップ③:市場定義

どの市場で戦うかを定義します。市場の収益性(成長率×競合集中度)と自社との親和性の2軸で判断します。「金属加工市場で戦う」と定義するか「ホビー市場向け精密加工で戦う」と定義するかで、競合・顧客・戦い方が全て変わります。

ステップ④:顧客定義

BtoBでは2段階で顧客を定義します。まず「どんな企業群に届けるか」(クラスター設計)を定め、その後「その企業の中の誰が動くか」(ペルソナ設計)という順番で進めます。BtoBの購買には平均6.8人が関与します(Gartner調査)。

ステップ⑤:独自性の定義

競合との差別化の軸を定義します。業界標準として満たすべき要素(PoP)と、自社だけの差別化要素(PoD)を整理し、機能的・情緒的・組織的価値の3層で設計します。弊社のBRAND CHECK診断(24社)では、競合理解が不十分な企業が大多数を占めていました。


ステップ⑥〜⑧:設計から実装まで

ステップ⑥:ブランドアイデンティティの設計

環境分析・市場定義・顧客定義・独自性の定義を踏まえて、WHY・WHO・WHAT・HOW・WHOM NOTの5つの問いでブランドアイデンティティを設計します。

ステップ⑦:ブランド戦略の設計

ブランドアイデンティティをどう実現するかの計画を設計します。指名発注が生まれる5段階(認知→記憶→想起→信頼→指名)のどこが弱いかを特定し、優先して強化する施策を設計します。KPI(指名率・受注単価・紹介受注率・採用応募数)を設定し、効果を測定できる状態にします。

ステップ⑧:活動層への実装

設計したブランドを、実際の活動に落とし込みます。

  • 営業:「選ばれる理由」を組織共通の言語にする
  • 採用:理念・価値観を求職者に正しく伝える
  • Web:誰に・何で・なぜ選ばれるかを明示する
  • 社内浸透:全社員がブランドを体現できる状態を作る

まとめ

BtoBブランディングを正しく進めるための8つのステップはこうです。

①ブランドコンセプトの設定→②環境分析→③市場定義→④顧客定義→⑤独自性の定義→⑥ブランドアイデンティティの設計→⑦ブランド戦略の設計→⑧活動層への実装

最も重要なのは①の問題の設定です。表面的な症状の裏にある本質的な原因を正しく特定することが、全ての出発点です。「利益率が下がったから新事業を作りたい」という依頼の裏に、本業の商流・バリューチェーン・収益構造の問題が隠れていることは少なくありません。


よくある質問

Q:8つのステップを全て自社だけで進められますか? A:可能ですが、特にステップ①(問題の設定)は自社の「当たり前」に気づきにくいため、外部の視点を入れると精度が上がります。

Q:8つのステップにはどれくらいの期間がかかりますか? A:企業規模や情報の整備状況によりますが、標準的には3〜6ヶ月が目安です。

Q:新事業を作りたいという相談は間違っていますか? A:間違いではありませんが、本業の問題を診断せずに新事業だけに投資すると、両方が機能しないリスクがあります。まず本業の商流・収益構造を確認することをおすすめします。


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著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績

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