コラム2026.09.27

ブランドアイデンティティの作り方——分析と定義の後に設計する理由

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績


この記事で分かること

  • ブランドアイデンティティを作る正しい順番
  • 設計前に必要な4つの準備
  • 5つの問いでブランドアイデンティティを定義する方法
  • よくある失敗パターン4つ

結論(要約)

ブランドアイデンティティの作り方には正しい順番があります。「分析と定義の後に設計する」です。環境分析→市場定義→顧客定義→独自性の定義という4つの準備を経てから、WHY・WHO・WHAT・HOW・WHOM NOTの5つの問いで設計します。いきなり言葉から考え始めると、現実からズレた「絵に描いた餅」になります。


ブランドアイデンティティを作る正しい順番とは

ブランドアイデンティティの作り方には、正しい順番があります。その順番とは「分析と定義の後に設計する」です。

多くの経営者はいきなり「どんな言葉で表現するか」から考え始めます。しかしそれは順番が逆です。市場・顧客・競合を理解せずに設計したブランドアイデンティティは、現実からズレた「絵に描いた餅」になります。

正しい順番はこうです。

①環境分析 → ②市場定義 → ③顧客定義 → ④独自性の定義 → ⑤ブランドアイデンティティの設計

ブランドアイデンティティ開発の研究では、設計プロセスは市場状況の分析・環境の分析・マーケティング戦略の分析・ブランドポジショニングの選択という順番で進むべきとされています(Aaker, 1996; Kapferer, 2008)。

また、市場や顧客は常に変化しています。一度作ったブランドアイデンティティも定期的に見直すことが必要です。ネスレは4年ごとに見直しをしています。


ブランドアイデンティティ設計の前に必要な4つの準備とは

①環境分析

PEST分析(政治・経済・社会・技術という4つの視点で外部環境を整理するフレームワーク)と5Forces分析(競合・新規参入・代替品・買い手・売り手の5つの力で業界構造を分析するフレームワーク)を使います。

「今の時代にどんな価値が求められているか」「業界全体にどんな変化が起きているか」を理解せずに設計したブランドアイデンティティは、時代に合わないものになります。

②市場定義

どの市場で戦うかを定義します。市場の成長性・収益性・競合の集中度と、自社との相性の2軸で判断します。

市場が定まることで、「この市場でどんな意味づけが有効か」が見えてきます。

③顧客定義

誰に届けるかを定義します。BtoBではまず「どんな企業群に届けるか」(クラスター設計)を定め、その後「その企業の中の誰が動くか」(ペルソナ設計)という順番で進めます。

BtoBの購買には平均6.8人が関与します(Gartner調査)。顧客が定まることで、「この顧客にとって何が意味を持つか」が分かります。

④独自性の定義

業界標準として満たすべき要素(PoP:競合と共通して持つべき基準点)と、自社だけの差別化要素(PoD:競合との明確な違い)を整理します。機能的価値・情緒的価値・組織的価値の3層で設計します。


ブランドアイデンティティを定義する5つの問いとは

4つの準備が整ったら、5つの問いでブランドアイデンティティを定義します。

①WHY(存在理由) なぜこの会社は存在するのか。何のために事業をしているのか。「この会社が存在することで、誰のどんな課題が解決されるか」という問いに答えます。

②WHO(対象) 誰のための会社か。顧客定義で設計したクラスター・ペルソナをここに落とし込みます。

③WHAT(提供価値) 何を提供しているのか。機能的・情緒的・組織的価値の3層で定義します。

④HOW(方法・スタイル) どのように提供するのか。推奨する行動・禁止する行動(行動規定)がここに入ります。

⑤WHOM NOT(非対象) 誰のための会社ではないか。ノンターゲットを定義することで、ブランドの軸が明確になります。


よくある失敗パターン4つとは

失敗①:分析なしに作り始める 「うちの会社らしさは○○だ」という感覚だけで設計する。現実からズレたアイデンティティになります。

失敗②:抽象的な言葉で終わらせる 「誠実・信頼・品質」だけで定義する。競合も同じことを言っています。差別化になりません。

失敗③:設計して終わりにする 営業トーク・採用メッセージ・Webサイト・社員の行動に落とし込まなければ意味がありません。設計は出発点です。

失敗④:経営者だけで作る 社員が設計に関与することで、「自分たちのブランド」という感覚が生まれます。経営者だけで作ると「押しつけ」になります。


まとめ

ブランドアイデンティティの作り方の正しい順番はこうです。

①環境分析 → ②市場定義 → ③顧客定義 → ④独自性の定義 → ⑤WHY・WHO・WHAT・HOW・WHOM NOTの5つの問いで設計

分析なしに作り始めることが最も多い失敗パターンです。「こうありたい」という願望ではなく、市場・顧客・競合の現実を踏まえた上で設計することで、機能するブランドアイデンティティが生まれます。


よくある質問

Q:ブランドアイデンティティの作り方に必要な期間はどのくらいですか? A:4つの準備(環境分析・市場定義・顧客定義・独自性定義)に1〜2ヶ月、設計に2〜4週間が目安です。

Q:一人でも作れますか? A:作ることはできますが、社員を巻き込んだ方が浸透しやすくなります。最低でも主要なメンバーを設計プロセスに関与させることをおすすめします。

Q:完成したら変えてはいけませんか? A:定期的な見直しが必要です。市場・顧客・競合は変化するため、3〜5年ごとに整合性を確認することをおすすめします。


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著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績

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