コラム2026.09.28
ペルソナが機能しない会社に共通する3つの原因
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績
この記事で分かること
- ペルソナが機能しない3つの根本原因
- 根拠・検証・競合視野それぞれの欠如が招く問題
- ペルソナがブランド戦略全体に与える影響
結論(要約)
ペルソナが機能しない原因はペルソナの作り方の問題ではなく、「根拠・検証・視野」の3つが欠けていることです。①データに基づかない願望としてのペルソナ②検証・更新の仕組みの欠如③競合視点の欠如——この3つが揃わなければ、ペルソナは営業・採用・Webで使われないまま形骸化します。
「ペルソナを作ったのに、営業で使われていない。」「作ったけど成果につながっている実感がない。」
ペルソナとは購買に関わる条件を分析・整理した顧客像です。しかし実際には、多くの会社でペルソナが機能していません。
原因①:根拠となる情報が蓄積されていない
ペルソナの精度は、背後にある情報の質と量で決まります。
BtoBバイヤーペルソナ研究(Tomba, 2026)では、信頼できるペルソナは4つの情報層から構築すべきとされています。インタビュー・勝敗データ(受注・失注の分析)・購買意図シグナル・企業属性情報の4層です。そしてこう明記しています。「ペルソナは内部の意見ではなく、これらの証拠に基づくものでなければならない。」
ペルソナを作るアプローチは複数あります。STPから入る方法も、仮ペルソナを複数作りABテストで検証しながら本ペルソナを作り上げる方法もあります。どのアプローチをとっても、根拠となる情報がなければペルソナは願望になります。
弊社が独自に開発したブランド診断ツール「BRAND CHECK」(12の指標をもとに自社のブランド現状を数値化し、経営課題を可視化するツール)による24社の診断データでは、KPI設計ができていない企業が70%以上でした。
KPI設計がなければ、顧客の購買行動・成約率・失注理由などのデータが蓄積されません。データがなければ現場の実態が見えない。見えないまま顧客像を描こうとするから、「こんな顧客に来てほしい」という願望が入り込みます。
原因②:検証の仕組みがない
仮にデータを集めてペルソナを作っても、それで終わりにしてはいけません。
最新の研究(Arise GTM, 2026)では、2024〜2026年の新しいアプローチとして「仮説を立て→行動追跡で検証し→実際の行動と申告された行動のギャップを体系的に比較する」継続的な検証プロセスが推奨されています。
ABテストはペルソナの仮説を検証する有効な方法です(MixBright, 2025)。ペルソナに合わせた異なるメッセージ・提案・コンテンツをテストすることで、「何が実際に響くか」の実データが得られます。
しかし多くの会社では、作ったペルソナが機能しているかどうかを測定・改善する仕組みがありません。KPIがなければ検証できない。検証できなければ改善もできない。ペルソナは一度作ったら終わりではなく、継続的に更新するものです。
市場・顧客・競合は変化します。BtoBペルソナ研究(Tomba, 2026)では「成約データと企業属性情報を使ってペルソナを四半期ごとに更新しなければ、最初と同じ推測に戻っていく」と警告しています。
原因③:競合を見ていない
ペルソナは自社だけを見て作るものではありません。市場全体の中で自社がどこに位置するかを把握した上で、「誰に・何で・なぜ選ばれるか」を定義するものです。
弊社のBRAND CHECK診断データでは、競合理解が不十分な企業が診断企業の大多数を占めていました。
競合を理解していなければ、こういう問題が起きます。競合も同じ顧客を狙っているのに、自社の顧客像と競合の顧客像が重なっていることに気づかない。その結果、競合との違いが反映されないペルソナができあがります。
Porter(1980)の競争戦略論では、自社のポジショニングは競合との相対的な関係で決まるとされています。競合を見ずに自社だけを見ていては、正確な市場の立ち位置を定義することはできません。
3つの原因がブランド戦略に与える影響
この3つの原因——根拠・検証・競合視野の欠如——が重なると、ブランド戦略全体が崩れます。
ペルソナはブランド戦略の「誰に」の部分です。ここがズレると、「何で選ばれるか」「なぜ選ばれるか」という上位の設計も全てズレます。
- 「誰に」がズレている→営業トークが的外れになる
- 「誰に」がズレている→採用メッセージが刺さらない
- 「誰に」がズレている→Webサイトが誰にも刺さらない
ペルソナが機能するとき、営業・採用・Webが一気に変わります。逆に言えば、営業・採用・Webが機能していない会社は、ペルソナの精度を疑うことから始めるべきかもしれません。
まとめ
ペルソナが機能しない3つの原因はこうです。
①根拠となる情報が蓄積されていない:データなしに作るペルソナは願望になる。
②検証の仕組みがない:作ったペルソナが機能しているかを測定・改善するKPI設計がない。
③競合を見ていない:自社目線だけで顧客像を描き、市場全体の立ち位置が反映されない。
どのアプローチをとっても、この3つが揃わなければペルソナは使えません。ペルソナは一度作って終わりではなく、データを蓄積し、検証し、更新し続けるものです。
よくある質問
Q:ペルソナ作成に必要な最低限のデータは何ですか? A:受注・失注の理由、既存顧客へのインタビュー、企業属性情報の3つが最低限の出発点です。
Q:ペルソナはどれくらいの頻度で更新すべきですか? A:四半期ごとの見直しが推奨されます。市場・顧客・競合の変化を反映しないと、最初の推測に戻っていきます。
Q:ペルソナと市場定義はどちらを先に決めるべきですか? A:市場定義が先です。どの市場で戦うかが決まっていないと、ペルソナの前提となる「どんな企業群を狙うか」が定まりません。
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著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)MBA取得/元INPIT登録ブランド専門家/BtoB中小企業への100回以上のブランドセミナー・コンサルティング実績
