コラム2026.10.31
ホームページのリニューアルで意見がまとまらない——制作前に決める五つのこと
デザイン案を見せるたびに、別の意見が出る。修正したところを、次の会議で戻す。そんなときは、次の案を頼む前に「何が未決定なのか」を書き出してください。
顧客像が違うのか、掲載するサービスが決まっていないのか。それとも、目的は同じでも読みやすさの評価が割れているのか。すべてを好みの問題にすると、決めるべき人も判断材料も曖昧になります。以下は、制作を進めるための実務提案です。特定の会社の事例や、成果を保証する方法ではありません。
修正意見を、判断する問題に戻す
まず、未解決の意見を一つずつ「何が心配か」に言い換えます。「もっと高級感を」なら、誰からどのような会社だと思われたいのか。「情報を全部載せたい」なら、誰が何を判断するための情報かを聞きます。意見を否定せず、解くべき問題を明らかにするためです。
そのうえで、次の五項目を一枚にまとめます。
- 優先する相手: 今回、どの顧客のどの検討場面を助けるか。採用候補者や既存顧客も対象なら、それぞれの入口をどう確保するか。
- 期待する行動: サービスの適合性を判断する、相談する、必要資料を読むなど、ページで支える行動を決める。
- 伝える約束と根拠: 何を提供し、どの条件なら対応できるか。掲載する実績や数値は、出典と公開可否を確かめる。
- 今回の範囲: 改修するページ、残す情報、後で検討する項目、予算と期限を区切る。
- 判断する人: 事業方針、記載事実、操作性、表現について、誰が確認し、誰が最終決定するかを決める。
会社全体の意見をすべて同じページへ詰め込む必要はありません。ただし、優先順位をつけることと、既存顧客に必要な情報を消すことは別です。
経営が決めることを、デザイン案に預けない
「今後どの顧客を増やすか」「どこまでを自社のサービスとして約束するか」が未決定なら、制作会社に複数案を出してもらうだけでは経営判断が残ります。営業の受注記録、顧客からの質問、現場の提供能力を持ち寄り、方針を決める場を設けます。
ここにブランド戦略との接点があります。誰に、何を約束し、それをどの能力で支えるか。その選択をWebにも営業にも使うということです。ロゴや言葉を揃えるだけでは、提供できる範囲の食い違いは解けません。
一方、方針が決まっていて、文字が読みにくい、必要な情報を見つけにくいという問題なら、制作・設計側で改善を進める領域です。何でも経営理念の議論へ戻すと、必要な修正まで止めてしまいます。
意見が割れたら、何を見れば決まるかを決める
事実の食い違いは、記録や担当部門で確かめます。顧客が理解できるかが争点なら、対象に近い人に試作画面を見てもらい、「何を頼めると思ったか」「条件をどこで探したか」を尋ねる方法があります。誘導せず、分からなかった箇所も残してください。
少人数の反応を市場全体の評価とは扱いません。また、採算や事業の優先順位は、画面の人気投票では決められません。調べることと経営として選ぶことを分け、追加調査の担当と判断日を置きます。
決定後の変更は、誰の意見かだけで戻さず、新しい事実や条件変更があるかを見ます。変更理由、影響するページ、追加工数、承認者を記録すれば、後から判断をたどれます。
公開後に、決めた目的を点検する
公開前に、期待する行動と計測方法を対応させます。相談が目的なら件数に加え、対象に合う相談かも見ます。情報提供が目的なら、必要な情報へ到達できるかを確かめます。アクセス数だけで目的の達成を判断しないことです。
公開前後を比較する場合は、集計する日数と指標の定義を揃えます。曜日構成や季節による違い、広告や営業施策の変更も記録します。変化をリニューアルだけの効果とは断定できません。
問い合わせの内容が合わない場合の点検は、サービスの伝え方を見直す記事で扱っています。本稿の焦点は、その前段階で制作を止めている社内の未決定事項です。
対象顧客や提供価値の方針から揃える必要がある場合は、HUV DESIGN OFFICEの方針の合意と顧客接点への実装支援をご覧ください。予算不足や技術上の不具合が主因なら、それぞれの解決を先に進めます。
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
