コラム2026.09.27
ブランドエクイティとは何か——ブランドを「資産」として測る
ブランドエクイティを知りたいとき、売上や受注単価だけを見ると判断を誤るおそれがあります。顧客が会社をどう捉えているか、実際にどう選んだか、取引からいくら利益が残ったかは、分けて確かめたいことです。
ブランドエクイティとは何か
本稿では、顧客の側から捉えるブランドエクイティを扱います。Keller(1993)は、ブランドについての知識によって、そのブランドのマーケティングに対する消費者の反応に生じる違いとして概念化しています。[1] 同じ提供内容でも、ブランド名が付いている場合と、架空の名前や名前のない場合との反応の違いに着目する考え方です。
同論文は、ブランド知識を認知とイメージの二つから説明しています。これは個人の消費者を視点とする概念モデルです。日本のBtoB中小企業について、売上が何%上がるかを検証した研究ではありません。
ここから実務で考えたいのは、「当社を知っていることが、顧客の判断にどう関わっているか」です。ブランドの金銭的な評価額を算出することとは、問いが異なります。
顧客の評価・行動・収益を分ける
以下は、経営者が情報を読み違えないための実務上の分け方です。三つを順番に改善すれば必ず成果が出る、というモデルではありません。
顧客の評価。 どんな会社として思い出すか、何を期待するか、どこに不安があるか。質問への回答を集め、誰の、いつの評価かを残します。自社の自己評価を顧客の評価として扱わないことが出発点です。
顧客の行動。 比較候補に入れたか、発注したか、継続したか、紹介したか。好意的な回答と実際の購買を区別します。継続の理由も、評価だけでなく契約条件や切り替えの負担などを確かめます。
取引から得た収益。 売上、受注単価、粗利など。単価が上がっていても、仕様や案件規模が変わった可能性があります。単価の上昇だけを、ブランドエクイティが高まった証拠にはしません。
三つを見比べることで、次に調べる問いを作ります。評価はよいのに選ばれないなら、予算や導入条件、比較相手について聞く。受注は増えても利益が残らないなら、価格と原価、対応範囲を見る。いずれも原因の候補であり、結果だけから決めつけません。
一つの数字を「ブランドの点数」にしない
指名受注率や紹介受注率は、取引の変化を追う材料になります。ただし、分母、集計対象、期間、判定方法を揃える必要があります。指名されたかどうかが分からない案件は、不明として残します。
また、顧客への調査結果と会計データは、そのまま同じものとして足し合わせません。対応する顧客や案件を特定できない集計同士を、同一取引の流れとして結びつけることも避けます。対応するデータを揃えても、一緒に変化したことだけで因果関係が分かるわけではありません。価格改定や製品変更など、同時に起きた変化も記録します。
HUVのBRAND CHECKは無料の基本診断です。[2] 本稿では、そのスコアを将来の受注単価や指名率の予測値として扱いません。診断の結果から調べる課題を選び、顧客の回答や取引の記録と照らす、という使い方を提案します。
測った結果を、何の判断に使うか
最初は対象顧客と提供サービスを一つに絞り、何を確かめたいかを決めてください。期待されている価値と実際の提供がずれていないか。その価値を今後も約束できるか。ここまで考えると、測定は経営と現場の判断につながります。
具体的な指標の定義や集計方法は、BtoBブランディングの効果測定で扱っています。対象顧客・提供価値・選ばれる根拠について経営の合意が必要な場合は、HUVのサービス内容をご覧ください。
ブランドエクイティを資産として考える際も、顧客の評価、購買行動、収益の間にある関係を確かめる工程を省かない。その姿勢が、数字を次の判断に使うための土台になります。
参照資料
[1] Keller, K. L. (1993). Conceptualizing, Measuring, and Managing Customer-Based Brand Equity. Journal of Marketing, 57(1), 1–22. 定義とブランド知識の構成は本文1–2ページを参照。英語資料。 https://people.duke.edu/~moorman/Marketing-Strategy-Seminar-2015/Session%203/Keller.pdf
[2] HUV公式サービスページ(無料BRAND CHECKと別の個別診断を区別) https://huvdesignoffice.com/services
閲覧日:2026年10月24日。顧客評価・行動・収益を分ける実務提案は、上記論文の効果検証結果を示したものではありません。
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
