コラム2026.10.21
AIが出した「自社の強み」、営業で使ってよいか——採用する前の根拠の点検
AIに自社の情報を渡し、強みを分析してもらった。言葉にはなったけれど、そのまま営業資料に載せてよいのか迷う。
そんなときは、表現を磨く前に、出てきた主張を一つずつ点検してみてください。「顧客が評価している」「競合より優れている」「自社が提供できる」は、別々に確かめたいことです。
以下は、AIで作った強みの案を営業に使う前の実務提案です。特定のAI製品の精度や、売上への効果を示すものではありません。
まず、一文を分解する
説明のための仮の表現として、「高い技術力と柔軟な対応で、顧客から選ばれています」を考えます。これは実在の企業や相談事例ではありません。
この一文には、技術力の評価、対応範囲、顧客の選定理由という三つの主張が含まれています。根拠を一括で扱わず、次のように分けます。
- 技術力:どの加工・業務・条件について、何ができるのか。
- 柔軟な対応:どこまで変更でき、どの条件では対応できないのか。
- 選ばれている理由:誰が、いつ、どの案件についてそう話したのか。
AIの出力に資料名が付いていても、その資料を開き、該当する内容があるかを自分で照合します。自社の説明文を入力した場合は、それが顧客の評価によって裏付けられているかも別に調べます。
「根拠があるか」に加えて、「どこまで言えるか」を見る
作業用の記録には、主張ごとに「根拠の所在」「対象と期間」「言える範囲」「未確認事項」「確認する担当者」を残します。
顧客一社の評価を得たなら、その顧客、その案件の評価として扱う。特定条件での納期実績があるなら、条件と対象期間を添える。比較対象の情報がなければ、「他社より速い」という比較は保留します。
顧客への聞き取りが必要な場合は、選ばれた理由を聞くための質問と記録方法を参考にしてください。今回の記事で扱うのは、その調査方法全体ではなく、出力された主張を営業で採用する判断です。
根拠が見つからないときは、さらに説得力のある表現を作る前に、調べる課題として残しましょう。
採用・限定・保留を決める
判断は三つに分けると進めやすくなります。
採用する。 根拠と表現の範囲が一致し、現場がその約束を守れる。営業資料に使う前に、公開してよい情報かも確かめます。
条件を限定して使う。 実績はあるが、対応できる対象や条件が限られる。対象、前提、例外を明記し、営業担当にも共有します。
保留する。 出典が見つからない、顧客の評価を確認できない、比較条件が揃わない、または現場の提供能力が追いついていない。足りない根拠と調べる担当者を決めます。
採用できることと、営業の中心に据えることは別です。事実であっても、顧客が選ぶ際に重視するとは限りません。裏付けを取った後は、その特徴が誰のどんな困りごとに役立つのかを確かめる段階です。
言葉では埋まらない問題もある
もし「短納期」が候補に出ても、受注量によって守れないなら、表現だけの問題ではありません。受ける仕事、約束できる条件、必要な体制を経営として決める必要があります。
一方、方針も根拠も揃っており、文章だけが読みにくいなら、編集で足りる場合があります。すべてをブランド戦略の見直しにつなげる必要はありません。
ブランド戦略との接点は、誰に何を約束し、その約束をどう提供し続けるかを決めるところにあります。AIが作った案も、その判断の材料として扱います。
最初は、営業資料に載せたい強みを一つ選んでください。根拠、適用条件、提供責任者を並べ、使える表現と未確認事項を分けて残す。それが今回の作業の到達点です。受注率が上がると保証する手順ではありません。
提供価値や対象顧客、選ばれる根拠を経営として決めきれない場合は、HUVのサービス内容をご覧ください。HUVでは、これらを経営の合意事項として定める支援を行っています。
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
支援内容の確認先:HUV公式サービスページ(2026年10月21日閲覧)。本文の点検手順は実務提案です。
