コラム2026.09.30
BtoB企業の競合分析は誰と比べるべきか——同業他社だけでは見えない選択肢
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
結論
競合分析の起点は、業界内で似た会社を列挙することではありません。顧客がその課題を解決するときに、実際に比較する選択肢を確かめます。同業他社に加え、内製、既存取引先での継続、購入の延期も確認します。そのうえで、顧客が同じ条件で比較できる範囲に絞って評価します。
本稿はポジショニングの定義ではなく、経営者が競合比較表を作る前に「誰を比べるか」を決める手順です。
公開資料から分かること
米国中小企業庁(SBA)は競合分析について、製品・サービスと市場セグメントごとに競合を特定し、間接的な競合も考慮するよう案内しています。[1] 日本の中小企業庁『2025年版中小企業白書』は、2024年11~12月に実施した中小企業等へのアンケートを使い、経営戦略や新規事業を考える際に「競合他社の特徴・動向」を最も重視する外部環境として挙げた回答が多いと報告しています。[2] これは回答傾向を示す資料であり、競合を調べるだけで業績が改善するという因果関係を示しません。
以下は、これらの資料を踏まえてHUVが提案する実務手順です。
1. 比較の場面を一つに絞る
「自社の競合はどこか」では広すぎます。まず、どの顧客が、何を達成するために、いつ選定するかを決めます。たとえば既存設備の保守を続ける判断と、新しい設備を導入する判断では、比較対象も評価条件も変わります。この例は説明用で、特定企業の事例ではありません。
2. 顧客が検討した選択肢を聞く
受注・失注の案件記録を見直し、可能なら顧客に「当社以外に何を検討しましたか」と聞きます。社名だけでなく、内製、現状維持、延期が候補だったかを確認します。競合の見積書を見ていない場合に、その価格や仕様を推測で表に入れないでください。
記録する情報: 顧客の課題、比較された選択肢、情報源、確認日、分からない項目。顧客の発言と営業担当者の推測を分けます。
3. 同じ条件で比較する
各候補について、対象範囲、品質条件、納期、保守、顧客側に必要な作業、価格と支払条件を揃えます。公開サイトに書かれている特徴と、個別案件で提示された条件も区別します。公開情報のない項目は空欄にし、「劣っている」とは書きません。
比較表が埋まっても、顧客がその違いを重視しなければ、優位性とは言えません。顧客の必須条件と選定理由を別列に置きます。値下げ前の確認項目は、個別案件の判断に役立ちます。
4. 経営判断に変える
比較から、①必須条件を満たしていない、②満たしているが根拠を示せていない、③顧客が求めない強みを訴求している、④現状維持や内製の負担を説明できていない、のどれが課題かを整理します。①は提供体制、②は証拠資料、③は対象顧客と価値提案、④は導入負担や移行支援の見直しにつなげます。
一度に全市場を分析せず、まず直近の対象案件を同じ形式で記録し、比較される選択肢が変わったときに表を更新します。
限界
顧客から得られる回答は一部に限られ、競合の非公開条件は確認できません。また、同じ競合でも案件ごとに提案内容は異なります。比較表は市場の絶対的な順位表ではなく、特定の顧客・用途における判断資料です。
まとめ
競合分析を始めるなら、まず一つの購買場面を決め、顧客が比較した選択肢と条件を確かめてください。その情報があって初めて、自社のどの能力を残し、どこを改善し、何を伝えるかを決められます。
参考資料
[1] U.S. Small Business Administration, Plan your business: Market research and competitive analysis(競合を製品・サービスと市場別に特定し、間接的な競合も考慮する説明)。閲覧日:2026年9月30日。
[2] 中小企業庁「2025年版中小企業白書 第2部第1章第1節 経営戦略」。2024年11~12月の調査を用いた外部環境に関する回答傾向。閲覧日:2026年9月30日。
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