コラム2026.10.09

新サービスが売れない——販促を増やすか、作り直すかを決める材料

サービスを作り、紹介ページも用意した。それでも受注が少ない。そこで広告や営業を増やすべきか、サービスそのものを変えるべきか。判断を急ぐ前に、どこまで確かめられているかを見たいところです。

売れていないという結果だけでは、原因は決まりません。対象顧客へ届いていないのか、課題はあるが今は優先されないのか、条件が合わないのか。次の投資は、その違いを確かめるために使います。販促費を増やすことを最初から答えにしないでください。

商談のどこで止まったか

想定する顧客と、実際に説明した相手を分けて記録します。問い合わせ件数だけでなく、相手の課題、検討時期、比較対象、社内で決める人、見送った理由を追います。理由を聞けなかった案件は「不明」のまま残します。

対象に近い相手へ十分に説明できていないなら、まず接触の方法を試す余地があります。課題は認められたが、既存の方法で足りると言われたなら、切り替える価値を考え直す。導入を望んでも提供条件が合わないなら、仕様、料金、実施時期など、何が障害なのかを見ます。

「いいですね」という感想と、具体的な条件での購入意思は別です。協力を得られる相手には、次に何を決めれば発注を検討できるかを聞いてください。聞き方は顧客の選定理由を調べる記事につながります。

米国中小企業庁(SBA)は、市場調査の問いに需要、類似する選択肢、価格などを挙げ、直接調査の方法も紹介しています。[1] これは調査の観点であり、聞き取りだけで需要や売上を保証するものではありません。

売れる条件でも、提供して利益が残るか

対象顧客の反応が見えたら、その条件で提供できるかを現場と確かめます。必要な工程、人員、外部費用、追加対応を見積もり、実施できない条件は提案から外します。受注したあとで既存の仕事を圧迫するなら、販売だけを増やす判断はできません。

同じSBAのガイドは、単一の商品・サービスの損益分岐点を、固定費を「単価から単位当たり変動費を引いた額」で割って求める方法を説明しています。[1] 分母が正で、固定費の対象期間と販売数量の期間を揃え、単価と単位当たり変動費をその数量の範囲で一定とみなせることが前提です。複数サービスや案件ごとに工数が違う仕事を、一つの平均単価で判断するのは慎重にしたい。試算上の黒字と、入金まで資金が持つことも別です。

どの顧客の、どんな課題なら、約束した価値を採算に合う形で提供できるか。そこまで決めるのがブランド戦略の仕事です。サービス名や紹介文を整えるだけでは、この判断は進みません。

次の検証で、何が分かれば決められるか

次に試す対象と条件を一つに絞り、開始前に次の四点を経営と担当者で決めます。

  • 確かめる仮説と、記録する顧客の行動
  • 使える費用、時間、提供能力の上限
  • 結果を検討する日
  • 続ける、条件を変える、止めると判断する材料

一律に何件売れたら成功とする必要はありません。単価、購買周期、検証に使える資金で基準は変わります。面談だけで終わったのか、有料の試行に進んだのか、正式な発注に必要な条件が分かったのかを、最初に決めた仮説と比べます。反応はあるが条件が合わないなら、その条件だけを変えて再検証する。対象の課題そのものが弱いなら、対象顧客か提供価値の仮説を戻して考える。検証費用を負担できないなら、追加投資を止める判断も必要です。結果が弱いのに、期限と費用だけを延ばさないようにします。

新事業の名前をどう決めるかは既存の信用との関係を扱っています。本稿は、すでに提供を始めたサービスに次の投資をする判断です。HUV DESIGN OFFICEの対象顧客・提供価値・選ばれる根拠を定める支援は、顧客の反応を事業の選択へつなぐ段階でご相談いただけます。

規制対応、技術上の欠陥、資金不足が主因なら、それを先に解く必要があります。提供中の契約や顧客対応を放置して停止する話でもありません。検証が足りないことと、継続できる資金がないことは分けて判断してください。

参照資料

[1] U.S. Small Business Administration, “Plan your business”(Market research and competitive analysis/Break-even point。2026年10月9日閲覧) https://www.sba.gov/counseling/plan-your-business/

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)

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