コラム2026.10.05
同じ顧客からの苦情が繰り返される——謝罪の次に経営者が見るべき記録
苦情を受けたら、まず事実を確かめ、必要な安全対応や契約上の対応を進めます。その後、謝罪と担当者の注意だけで終えると、次の案件でも同じ問題が残るかもしれません。経営者が見たいのは、誰が悪かったかという結論より、どの約束が、どの工程で守れなくなったかです。
一件の経過を時系列にする
顧客が求めたこと、見積と契約で合意したこと、営業が伝えたこと、現場に渡った指示、実際の提供、顧客の指摘を同じ時間軸に置きます。顧客の言葉と社内の推測は分けます。苦情の件数だけでは、仕様違反なのか、説明不足なのか、期待の食い違いなのかが分かりません。
営業と現場の引き継ぎが原因なら、受注後に渡す情報を見直します。ただし、引き継ぎが正しくても設備・人員・品質管理に不足があれば、そちらが先です。表現を変えて問題を覆わないでください。
繰り返しの場所を探す
似た苦情を案件、顧客、製品、担当工程で並べます。毎回違う仕様変更が原因なのか、同じ基準の判断が部署によって異なるのか。原因が定まるまでは「現場の意識が低い」と断じません。是正の責任者、顧客への説明者、再発を確かめる日を決めます。
米国NISTのBaldrige Criteria Commentaryは、顧客からの苦情や苦情対応を、顧客に関する結果の指標の一つとして挙げています。また、顧客の声を事業プロセスの改善に結びつける観点を示しています。これは品質管理の個別手順を規定する資料ではありません。上記の時系列と分類は、本稿の実務提案です。
「選ばれる理由」との関係
顧客が期待する品質や対応を、営業は強みとして約束しているのに、現場の工程では再現できていない。そう分かった場合、これは苦情窓口だけの問題ではありません。経営者が、何を標準として約束し、どこまでを例外とするかを決め、提供能力と営業の説明を揃える必要があります。守れない約束への対応も、この判断につながります。
製品事故や法令に関わる事案は、専門の安全・品質・法務対応を優先してください。ブランドの言葉だけで解決できる問題ではありません。複数案件に共通する「約束と提供のずれ」を経営方針から見直す場合は、HUV DESIGN OFFICEの支援内容をご覧ください。個別の製品不具合の調査や安全対応は、その分野の専門家と進めてください。
参照資料
- 米国NIST「Baldrige Criteria Commentary」Customer Listening / Customer-Focused Results(閲覧日:2026年10月5日) https://www.nist.gov/baldrige/baldrige-criteria-commentary
著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)
