コラム2026.10.09

営業担当によって説明が違う——トークを揃える前に、約束する条件を揃える

担当者ごとにサービスの説明が違う。気になって営業トークを統一しても、同じ言葉の裏で、料金に含める仕事や対応できる納期が違っていたら、顧客への約束は揃いません。

最初に分けたいのは、言い方の違いと、提供条件の食い違いです。顧客に合わせて説明の順序を変えることまで、なくす必要はありません。誰が話しても、会社が引き受ける範囲と、その条件が矛盾しないようにします。

台本より先に、実際の提案を並べる

同じサービスを扱った直近の提案書、見積書、メールを集めます。顧客に録音などを求める必要はありません。まずは社内で扱える記録から、サービスの対象、成果物、費用に含む範囲、納期、追加対応を比較します。

説明が違って見えても、顧客の仕様や契約条件が違うだけかもしれません。案件ごとの理由を消して、すべて同じ表現に直さないこと。逆に、同じ条件なのに回答が違うなら、根拠となった規程や版、確認した相手を調べます。

古い資料が残っていたのか。例外として認めた対応を、別の案件でも通常の提供範囲だと説明したのか。経営が方針を変えたが、現場へ届いていなかったのか。原因が違えば、直す場所も違います。「営業の理解不足」に一括りにしないでください。

変えてよい説明と、変えてはいけない条件

営業と提供部門で、一つのサービスについて次の三つを分けます。

共通に守るもの。 対象顧客、提供価値、標準の範囲、その範囲を実現する能力、顧客に示せる根拠。

案件ごとに変わるもの。 仕様、日程、見積額など。何を確かめてから答えるかを決め、未確定なら未確定と伝えます。

例外として判断するもの。 標準を超える対応。判断する人、採算と納期への影響、合意内容を残す場所を決めます。

話し方を揃えるために、提供できない約束まで統一してはいけません。「柔軟に対応する」を掲げるなら、何に柔軟で、何は守るかを経営と現場で決める。選ばれる理由を、実際に続けられる仕事の条件へ変えるところがブランド戦略です。

米国NISTのBaldrige Criteria Commentaryは、顧客群の要求・期待を把握する観点と、戦略を業務や測定へ整合させる観点を示しています。[1] この三分類の効果を測った研究ではありません。本稿では、顧客に伝える内容と提供能力をつなぐ実務提案として用いています。

修正した条件を、別の担当者でも使えるか

共通の回答資料に、適用日、対象サービス、責任者を添えます。旧版が残る場所も決めて対処してください。改訂内容を送るだけで終えず、過去の同じ問い合わせを複数の担当者が判断し、理由を比べます。

回答が分かれるなら、必要な情報が足りないのか、条件の解釈が違うのかを見る。実際の案件では、例外の相談や顧客への再説明が必要になった箇所を残し、資料と判断の範囲へ戻します。見るべきなのは、台本を読めた回数より、約束の食い違いがどこに残るかです。

受注後の営業から現場への引き継ぎは、決まった約束を渡す工程を扱っています。本稿は受注前に、会社として何を約束するかを揃える工程です。例外の扱いは標準の約束を守れない案件の判断も参照してください。

提供能力が不足しているなら、人員や工程の改善が必要です。契約条件の解釈が争点なら、専門家と個別に検討します。文章だけで解決できる範囲を超えています。HUV DESIGN OFFICEのブランド方針を規定書・社内運用へつなぐ支援は、会社の約束を決めて現場で使う段階をご支援します。

営業の個性を消す必要はありません。相手に合わせて話しながら、会社として守る約束は変えない。そのための条件を先に決めましょう。

参照資料

[1] National Institute of Standards and Technology, “Baldrige Criteria Commentary”(Organizational Description/Strategy Implementation。2026年10月9日閲覧) https://www.nist.gov/baldrige/baldrige-criteria-commentary

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)

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