コラム2026.10.08

無料の追加対応が増えて利益が残らない——料金に含める仕事をどこで決めるか

受注はできている。値引きもしていない。それなのに、納品前後の修正や相談が重なり、思ったほど利益が残らない。営業は顧客に応えたいし、現場も途中で止めにくい。経営者が気づいたときには、見積もった作業から大きく広がっている。

この場合、先に決めたいのは「何時間から追加料金にするか」ではありません。もともと料金に含めた仕事なのか、自社の不備を直す仕事なのか、新しい依頼なのか。そこを分けずに請求を増やすと、約束した仕事まで追加扱いにしかねません。

利益が残らない原因を追加対応だけに決めつけることも避けます。原価の上昇や、最初の見積工数の不足が主因なら、手を打つ場所は違います。以下は、自社の案件を点検するための実務提案です。

見積書と、実際にした仕事を並べる

完了した同じ種類の案件から、見積書、依頼時の記録、変更のやり取り、実作業の時間と費用を集めます。見積書にないから対象外と即断せず、営業が口頭やメールで約束したこともたどってください。

追加に見える作業を、次の三つに分けて検討します。

  1. 当初の合意に沿った通常の作業(自社の不備の是正は2に記録)
  2. 合意した品質や条件を満たすため、自社側の不備を直す仕事
  3. 当初の合意から変更・拡張された依頼

判断できないものは、合意が曖昧な作業として残します。顧客が範囲を超えたのか、最初の説明が足りなかったのかは、記録を見てから考えます。二番目を新しい依頼と混ぜると、社内で直すべき原因が見えなくなります。なお、費用負担の法的な判断は、個別の契約や事情によって異なります。

材料・外注の費用と、作業時間を案件ごとに並べ、見積時との差を見ます。時間を金額に換算するなら、社内で使う原価の範囲と単価を揃えます。すでに原価に含めた人件費を追加対応費としてもう一度差し引かないでください。ここでの記録は経営判断用の比較であり、会計上の利益と同じ指標だとは扱いません。

「柔軟に対応します」の中身を決める

顧客が追加の相談や変更への対応を評価しているなら、その価値を全部削ることが正解とは限りません。料金に含める範囲を定め、その提供に必要な時間を価格と体制へ反映する方法もあります。

何を納めれば当初の仕事が完了するのか。どの変更まで料金に含むのか。どの条件で納期や費用を相談し直すのか。営業と提供部門で、実際の依頼を使って判断を比べます。

国土交通省の『公共建築工事見積標準書式(建築工事編)』は、見積条件書を、工事範囲に含める事項と含めない事項を明確にする書類として説明しています。[1] 官庁施設の営繕のための基準で、すべてのBtoB取引へそのまま適用する制度ではありません。範囲を具体化する考え方を参考にし、ここでは自社の提供業務に合わせた運用を提案します。

追加料金の話は、作業のあとに持ち出さない

変更された依頼だと判断したら、進める前に、当初との違い、必要な作業、価格と納期への影響を示し、取引上必要な合意を得ます。「仕様変更は別途」と書いただけで相手も同じ範囲を想像しているとは限りません。

顧客にとって必要な部分を絞る、納期を組み替える、別の発注に分けるなど、対応可能な条件を検討します。価格を上げても、現場に余力や能力がなければ約束はできません。例外案件で受注・条件変更・辞退を判断する方法も参考になります。

すでに受注している案件では、新しい社内ルールだけを根拠に合意済みの条件を変更しないでください。追加対応に該当するかが争点なら、事実と契約を確認するのが先です。今後の見積条件を直すことと、今回の支払義務を判断することは分けます。

無料にするなら、経営の選択として残す

新しい依頼を無償で受ける判断もあり得ます。ただし、その理由、対象範囲、必要な時間、他案件への影響、承認者を残します。顧客に追加料金がないことと、社内で費用がかかっていないことは別です。

同じ依頼が続くなら、例外として受け続けるのか、標準サービスへ含めるのか、有料の追加メニューにするのかを見直す。その仕事がどの顧客にどんな価値を生むか、継続して提供できるかまで考えます。

ここがブランド戦略との接点です。「対応がよい会社」という言葉を掲げるだけでは、どこまで約束できるかを判断できません。対象顧客への価値、料金に含む提供範囲、現場の実行能力をつなぐ必要があります。HUV DESIGN OFFICEの提供価値と判断基準を定め、接点へ実装する支援をご覧ください。

見直した条件は、一つの仕事から試す

次の見積もりでは、対象を一つのサービスに絞り、含む仕事と変更時の相談方法を説明します。受注数だけでなく、対応時間、追加の依頼内容、やり直し、顧客からの疑問を追います。相談が減っても、必要な相談まで止まっていれば改善とは言えません。

原価上昇への価格改定は値上げ交渉の記事で別に扱っています。本稿で決めたいのは、いまの料金でどこまで提供するかです。採算の問題を説明の工夫だけで解決せず、業務の改善、価格、提供範囲を合わせて選んでください。

参照資料

[1] 国土交通省『公共建築工事見積標準書式(建築工事編)』(2025年12月10日最終改定、第1章・見積条件書の説明。2026年10月8日閲覧) https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001472214.pdf

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)

コラム一覧へ戻る