コラム2026.10.14

代理店が売ってくれない——販売条件を変える前に、止まった提案をたどる

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)

代理店と契約したのに、案件が上がってこない。手数料を増やすか、勉強会を開くか。そこへ進む前に、相手がどこまで提案を進めたのかを聞いてみてください。

顧客に話す機会がなかったのか。話したが用途が合わなかったのか。関心はあったが見積もりや技術回答を待って止まったのか。販売件数だけでは、この違いが見えません。まず一つの販売パートナーと一つの商材で、止まった地点をたどる。まだ提案を一度もしていない場合は、試す顧客を選べないのか、担当や時間が決まらないのか、そもそも取り扱う意思がないのかを聞きます。以下はそのための実務提案です。「代理店」は契約上の役割が異なるため、本稿では販売パートナーの総称として用います。

契約した相手の先に、どんな顧客がいるか

相手の会社規模や顧客数から、販売できる件数を見込んでいないでしょうか。知りたいのは、自社の商材を必要とする顧客に、相手がどの場面で接しているかです。

現在扱っている商材、相談される困りごと、話をする部署、検討時期を聞きます。顧客名の開示を無理に求めず、契約と情報管理の範囲内で用途や条件を共有します。接点が違うなら、営業資料を増やす前に、対象顧客か販売パートナーの選び方を見直す必要があります。

中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、輸出の準備について、市場を知る現地の商社・輸入業者・代理店の選定、取引先の助言を踏まえた商品の検討、販売対象・商品・方法と価格・数量の計画を説明しています。[1] 海外販路についての実務解説で、国内BtoB代理店の成果を検証した研究ではありません。本稿の点検方法は、国内も含む販売パートナーとの仕事を考えるための提案です。

相手が引き受ける仕事と、採算を並べる

手数料の率だけを比べず、相手が実際に担う仕事を分けます。

  • 顧客を見つけ、最初の相談を聞く
  • 用途や必要条件を確かめる
  • 説明・見積もり・試用を進める
  • 導入や納品を支える
  • 問い合わせや不具合の連絡を受ける

誰がどこを担い、どれだけの時間や費用がかかるか。分からない負担は見込みとして残します。相手側の負担が報酬に見合わないなら、説明を磨くだけでは足りません。報酬、役割、対応範囲、商材の組み合わせを検討します。ただし、相手が売らない理由を採算だと決めつけず、本人に確かめてください。

メーカー側の支援にも原価があります。手数料を増やした後に技術対応や導入支援まで追加すれば、自社の利益が残らない可能性もある。両社の負担を見ずに、販売件数だけ増やさないことです。

商品説明の前に、顧客に約束する範囲を合わせる

仕様の説明資料が揃っていても、どんな顧客の何を解決する商材かが曖昧なら、提案先を選びにくくなります。

両社で、対象となる用途、適用できない条件、示せる根拠、納期や支援の範囲を一枚にします。顧客へ答えてよい内容と、メーカーに照会する内容も分ける。過去に止まった提案を使い、相手がどんな説明をし、顧客から何を聞かれ、どの回答が不足したかをたどります。

ここにブランド戦略との接点があります。誰に何を約束するかを、社外の販売パートナーが説明し、自社が実際に提供できる条件までつなぐことです。ロゴや資料の統一だけでは、提案と提供の食い違いは埋まりません。

ただし、会社としての約束を揃えることと、販売先や価格を一律に拘束することは別の問題です。取引条件や契約の変更は、専門家と個別に検討してください。本稿は法的な契約設計を扱いません。

一つの用途で、次の提案を試す

原因の仮説が立ったら、一つの用途と対象顧客群に絞って試します。販売パートナーが提案する内容、メーカーが支援する内容、回答する担当、振り返る時点を両社で合意します。相手が引き受けられない活動を一方的に割り当てないでください。

顧客接点、具体的な相談、見積もり、受注を分けて記録します。進まなかった提案は、用途不一致、検討時期、価格・採算、回答待ちなど、確認できた理由を残す。件数が少なければ、販売力や市場の需要を断定せず、未確認の条件を次の質問に変えます。

契約数や勉強会の参加人数だけを成果にせず、両社が続けられる採算と、顧客への約束が守れたかまで追います。製品性能や供給能力に不足があるなら、ブランド表現を変える前に提供体制を見直す必要があります。

営業先を選ぶ記事は対象の仕事を選ぶ判断、営業の説明を揃える記事は約束する条件の統一を扱います。本稿は、その約束を外部の販売パートナーと実行する段階です。

HUV DESIGN OFFICEでは、対象顧客と選ばれる理由を定め、営業などの接点で使える形にするブランド戦略の支援を行っています。代理店募集や営業代行の案内ではありません。まず、止まった提案を一つ選び、顧客に届く前の問題なのか、約束を提供する条件の問題なのかを、両社でたどってみてください。

参照資料

[1] 中小企業基盤整備機構 J-Net21「STEP2 販路開拓へ入念な準備」(輸出に関する実務解説。2026年10月14日閲覧) https://j-net21.smrj.go.jp/solution/global-expansion/export/step2.html

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