コラム2026.10.13

求人を出しても応募が来ない——条件を変えるか、伝え方を変えるか

著者:入倉大亮(株式会社HUV DESIGN OFFICE 代表取締役)

求人を掲載しても応募が来ない。そんなとき、採用サイトを作り直すべきか、給与を上げるべきか、媒体を変えるべきか。施策を先に選ぶと、原因と違うところに費用をかけることになります。

最初に分けたいのは、求人が届いていないのか、見られても候補から外れるのか、仕事を理解できず判断を止めているのかです。ここを分けずに「魅力を伝えよう」としても、良い言葉が応募を生むとは限りません。

応募数だけでは、どこで止まったか分からない

一つの職種と採用経路を選び、同じ期間で次の事実を並べます。

  • 求人が表示された回数
  • 詳細を見られた回数
  • 応募開始と応募完了の件数
  • 応募者のうち、会社が定めた必須条件を満たす人数
  • 辞退や未完了について、本人から確認できた理由

媒体によって取れる数字は違います。取れない数字を推定で埋めず、分かる地点までで判断します。表示自体が少なければ、職種名、勤務地、採用経路、予算、対象者の設定を点検する。詳細は見られているのに応募されないなら、条件や仕事の理解、応募手続きに論点を移します。

応募数を増やすことと、採用したい人から応募を得ることも同じではありません。必須条件を広げれば応募は増えても、選考対象が増えるとは限りません。

条件の問題を、表現で覆わない

給与、労働時間、休日、勤務地、雇用形態。候補者にとって外せない条件が市場の選択肢と合っていなければ、文章だけでは埋まりません。同じ地域・職種・経験水準の求人を比べ、自社の条件がどこにあるかを見ます。

変えられない条件もあります。その場合は、採用人数、求める経験、育成期間、業務分担のどれを見直せるかを経営で決めます。「応募者の価値観に合わない」と片づける前に、会社側が求める条件と、提供できる条件が釣り合っているかを見る必要があります。

反対に、条件は比較できる水準なのに仕事内容が「営業全般」「製造業務」だけでは、候補者は自分が担える仕事か判断できません。仕事の目的、最初に任せる業務、顧客や同僚との関わり、難しい場面、支援する人を事実で示します。

ハローワーク横須賀は、同所の職業相談窓口を利用した求職者500人を対象に、2024年5月から2025年1月まで求人票に関するアンケートを実施しました。要約では、応募時に仕事内容が重視され、仕事内容を詳しく記載した求人が応募に前向きになる要素として突出して多かったとしています。対象は横須賀の窓口利用者であり、すべての地域・職種・採用経路へ一般化できる調査ではありません。出典:ハローワーク横須賀「求人掲載のコツ」

「働く魅力」は、現場にある事実からつくる

条件と仕事内容を明確にしたあとで、自社で働く理由を考えます。理念を大きく掲げる前に、現在働く人が何を任され、誰のどんな役に立ち、どの判断を任されているかを聞く。経営者が伝えたい魅力と、現場で実際に得られる経験を分けます。

たとえば「挑戦できる」と書くなら、何を提案でき、誰が判断し、失敗したときにどう支えるのかまで確かめます。制度や仕事の裏付けがなければ、それは候補者への約束にできません。求人票と現場の実態を照合する手順は、この確認に使えます。

採用におけるブランドは、会社を魅力的に見せる包装ではありません。どんな人と、どんな仕事を通じて、どんな価値を生み出すのかを決め、その約束を現場で守れる状態にすることです。ただし、賃金水準や労働時間、安全、法令上の問題をブランドの言葉で解決することはできません。

次の変更は、一つの仮説として試す

条件、仕事内容、採用経路を一度に変えると、何が影響したのか分かりません。まず一つの職種で、原因の仮説と変える項目を決めます。同じ媒体で仕事内容を具体化する、対象者を変えず条件を見直すなど、比較できる形をつくります。

表示、詳細閲覧、応募、必須条件を満たす応募を同じ定義で記録します。少数の結果だけで効果を断定せず、時期や媒体の違いも残してください。応募が増えても、面接後や入社後に説明とのずれが生じるなら、別の問題です。内定辞退の確認や入社後の仕事の渡し方へ検証をつなげます。

HUV DESIGN OFFICEは採用代行や賃金制度の設計を行う会社ではありません。自社が約束する価値と、社員が実際に担う仕事、採用時の説明がつながっていない場合は、戦略設計と社内浸透の支援内容をご覧ください。

コラム一覧へ戻る